自毛植毛における株分け(株磨き)とは?定着率と生え際のデザインに必須の作業

植毛手術の株分け(株磨き)を行っている画像

自毛植毛を検討する際、多くの方が費用や痛み、ダウンタイムに注目しますが、実は自毛植毛の仕上がりを大きく左右する隠れた重要工程があります。

それが今回解説する「株分け(株磨き)」と呼ばれる作業です。

自毛植毛手術では、この株分け(株磨き)の有無や品質によって、定着率や生え際の自然さが大きく変わります。

しかし、株分け(株磨き)には、そのための時間と人員コストがかかるため、この工程を省略するクリニックも少なくありません。

この記事では、自毛植毛の完成度を左右する株分け(株磨き)について、具体的な内容と重要性、省略した場合に起こる問題まで詳しく解説します。

仕上がりの自然さや高い定着率など自毛植毛の品質にこだわりたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

植毛における株分け(株磨き)とは?

植毛における株分け(株磨き)とは?

自毛植毛手術は、大きく分けて以下4つの工程があります。

  • 株の採取
  • 株分け(株磨き)
  • 移植用の穴あけ
  • 移植

このうち②の株分け(株磨き)は、採取した株を分類し、移植に適した形へ整えるための重要な工程です。

ここでは、株分け(株磨き)がどのように行われるのか、その具体的な内容についてみていきましょう。

採取した株を分ける

採取した株を分ける

株分け(株磨き)の第一段階は、採取した株を毛の本数ごとに分ける作業です。

後頭部から採取された株には「1本毛」「2本毛」「3本毛」などが混在しているため、顕微鏡や拡大鏡を使って丁寧に仕分けていきます。

生え際には1本毛、中間部には2本毛、頭頂部には3本毛など、移植部位ごとに使い分けることで、自然なグラデーションを作り出します。

東京植毛クリニックで行われる株分け(株磨き)は、すべての株を3D実体顕微鏡で1株ずつ確認し、毛の本数だけでなく毛根の状態や太さ、角度なども細かくチェックしています。

採取時に傷ついた株や成長が期待しにくい株を除外し、移植に用いる株の品質を丁寧に整える方針です。

株の余分な皮脂や皮膚をカットする

株の余分な皮脂や皮膚をカットする

株分け(株磨き)の第二段階は、採取した株に付着している余分な皮膚や脂肪組織を丁寧に取り除く作業です。

パンチブレードで株を採取する際、毛根だけでなく周囲の皮膚や皮下脂肪も一緒に取れてしまうため、これらを顕微鏡下で慎重に切除していきます。

東京植毛クリニックでは、切除した株を「涙の雫」のような滑らかな形に整えています。

この形状により、スリット(株を植える穴)への挿入がスムーズになるだけでなく、移植部位の曲面に沿って自然にフィットするのです。

ただし、削りすぎると毛根を守る組織や血管まで失われ、定着率が低下するリスクがあります。

一方で削りが不十分だと、後述する様々な問題が発生します。このバランスを適切に保つためには、高度な技術と豊富な経験が求められます。

株分け(株磨き)の役割と重要性

植毛手術の株分け(株磨き)を行っている画像

株分け(株磨き)は自毛植毛の仕上がりを左右する重要な工程です。

自毛植毛手術は、植毛した株の量だけでなく、植毛した株の質にも影響されます。

株分け(株磨き)には、主に次の3つの役割があります。

①定着率の向上
日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドラインでは、自毛植毛の定着率は82.5%以上とされていますが、適切な株分け(株磨き)と術後ケアが追加されると、90〜95%という高い定着率をを目指せる可能性が高まります。

②生え際の自然なデザインの実現
人間の生え際は、細い1本毛が不規則に並ぶことで自然な印象になります。しかし、後頭部には1本毛が十分にないケースも多く、株分け(株磨き)によって2本毛や3本毛から1本毛を作り出す必要があります。

③移植密度をベストな状態にする
スリットのサイズに合わせて株の太さを調節することで、限られた面積に最大限の株数を植え込めます。適切なバランスを保てば、自然な密度と高い定着率を両立しやすくなります。

株分け(株磨き)をしないとどうなる?

株分け(株磨き)をしないとどうなる?

株分け(株磨き)を省略すると、仕上がりの不自然さや定着率の低下、術後の合併症など、さまざまな問題が起こるリスクが高まります。

ここでは、株分け(株磨き)を行わない場合に起こりうる3つの問題についてみていきましょう。

生え際が「でこぼこ」になる

株分け(株磨き)を行わない場合、生え際がでこぼこに盛り上がり、不自然な見た目になる可能性があります。

採取したままの株は球根のように丸く膨らんでおり、そのまま移植すると株の上部が頭皮の曲面から浮き上がってしまうためです。

特に生え際は顔の正面から見られる部分のため、わずかな凹凸でも目立ちやすく、自毛植毛を受けたことが気づかれやすくなる大きな要因になります。

適切な株分け(株磨き)を行えば、株が頭皮の自然な曲線に沿ってフィットし、最初から生えていたかのような滑らかな生え際を実現できます。

髪の毛の定着率が低くなる

定着率の低下も、株分け(株磨き)を省略した場合に生じやすい大きなリスクです。

余分な皮膚や脂肪を残したままの株は太くなり、スリット内で圧迫され、毛根への血流が妨げられます。

毛根は血液から酸素と栄養を受け取って成長するため、血流不足は深刻な問題です。

また、採取時に傷ついた株や弱っている株を選別せずに移植すると、生着しない株に貴重な移植スペースを使ってしまいます。

健康な株であれば、90%以上の定着率が期待できるところ、傷ついた株の場合定着率は50%以下になる可能性もあります。

皮膚に炎症が起こる可能性がある

株分け(株磨き)を省略した場合、術後の炎症や感染症といった合併症のリスクも高まりやすくなります。

余分な脂肪組織は雑菌が繁殖しやすい環境を作り出します。

特に問題となるのが脂肪組織の壊死です。

血流不足になると組織がダメージを受け、炎症反応を引き起こし、周囲の健康な毛根にまで悪影響を及ぼします。炎症が広がれば、せっかく定着した株まで失われる可能性もあります。

また、高密度植毛を行う場合は注意が必要です。高密度植毛は、スリット同士の間隔が狭くなるため、太い株を植え込むと隣り合うスリット同士がぶつかってしまい、繋がってしまう場合があります。

これにより、皮膚の盛り上がりや一時的脱毛などの合併症リスクが高まります。

株分け(株磨き)をしないクリニックがある?

株分け(株磨き)をしないクリニックがある?

自毛植毛において重要な株分け(株磨き)ですが、日本国内のすべてのクリニックがこの工程を行っているわけではありません。

ここでは、クリニックが株分け(株磨き)を省略する背景と、適切な技術で行わなかった場合のリスクについてみていきましょう。

株分け(株磨き)を省略する理由

株分け(株磨き)を省略する理由は、主に次の3点です。

①手術時間の短縮とコスト削減
手術時間が長くなるとその分人件費が増加し、1日に行える手術件数も減少してしまうため、利益を優先するクリニックにとって株分け(株磨き)は不要なコストと判断される場合があります。

②FUE法の技術的特性
FUE法ではパンチブレードで毛根を1株ずつ採取するため、そのまま植え付けることも技術的には可能です。従来のFUT法では株分け作業が必須でしたが、FUE法の普及により「株分け(株磨き)は必須ではない」という考えが広まり、省略するクリニックが増えた一因となっています。

③専任スタッフの確保と育成の難しさ
顕微鏡下で行う精密な加工作業には、高度な技術と集中力が必要で、技術を習得するまでには練習期間が必要です。ベテランスタッフを何人も確保するには高い人件費がかかるため、小さなクリニックや開院したばかりのクリニックでは、十分な体制を整えることが難しいのが実情です。

株分け(株磨き)のリスク

株分け(株磨き)は、ただ行えばよいものではなく、適切な技術がなければ逆効果になるリスクもあります。

十分な技術がないまま株分け(株磨き)行うと株を傷つけてしまい、場合によっては株分けを行わない方が結果として良かったというケースもあります。

特に注意が必要なのは、削りすぎによる毛根へのダメージです。

株に付着した余分な組織を取り除く際、毛根に近い部分まで切り込んでしまうと、毛根に栄養を届ける血管や成長をサポートする細胞まで影響がおよび、移植後の定着率が不安定になる可能性があります。

ある研究論文によれば、余分な組織を極限まで削ぎ落とした「スリム型株」は、ある程度の組織を残した「ふっくら型株」に比べて定着率が下がる傾向があるとされています。

このように、株分け(株磨き)は高度な技術と豊富な経験が求められる工程であり、行うかどうかだけでなく、その品質が自毛植毛の仕上がりを大きく左右します。

株分け(株磨き)をしなかった事例

株分け(株磨き)をしなかった事例

上記左の画像は、実際に株分け(株磨き)を行わずに植毛した一例です。

生え際に、ボコボコとした小さな隆起が複数確認できます。

これは、余分な組織が残ったままの太い株をそのまま植え込んだことで、株の上部が頭皮の曲面から盛り上がり、表面に凹凸ができてしまった状態です。

正面から見ると目立ちやすく、自毛植毛を疑われる原因になります。

株分け(株磨き)を適切に行わなかった場合、見た目の問題だけでなく、定着率にも大きな影響が出ます。

傷ついた株や余分な組織が付着した株を選別せずに移植すると、健康な株と状態の悪い株で定着率に極端なバラつきが生じてしまうのです。

その結果、移植部位全体の密度にムラが生じ、一部だけ薄く見える不自然な仕上がりになります。

本来1回の手術で完成するはずが、追加の修正手術が必要になるケースも少なくありません。

株分け(株磨き)に関する5つのQ&A

株分け(株磨き)に関する5つのQ&A

株分け(株磨き)は、自毛植毛の中でも特に専門性の高い工程のため、理解しておきたい内容が多くあります

ここでは、株分け(株磨き)についてよくある質問をQ&A形式でみていきましょう。

株分けと株磨きは同じ意味?

一般的には「株分け」と呼ばれる工程を、東京植毛クリニックでは「株磨き」という言葉で表現しています。

この「株磨き」は東京植毛クリニックが商標取得した独自の呼称です。

業界全体では、採取した株を顕微鏡下で選別し、加工する一連の作業を「株分け」と呼ぶのが一般的です。

行っている作業自体は同じですが、東京植毛クリニックではこの工程を自毛植毛の品質を左右する最重要工程として特に重視しています。

「磨く」という言葉には、一つひとつの株を丁寧に仕上げていくという意味が込められており、東京植毛クリニックのこだわりを表現するため、あえて「株磨き」という名称を使用しています。

この記事では、一般的な呼称である「株分け」と合わせて「株分け(株磨き)」と表記しています。

FUT植毛とFUE植毛の違いは?

FUT法とFUE法の主な違いは次の通りです。

項目FUT法FUE法
採取方法後頭部の頭皮を帯状に切除し、株を切り分ける直径約1mmのパンチで毛根を1株ずつくり抜く
傷跡線状の傷跡点状の小さな傷跡
術後の痛み比較的強い軽い
株分け(株磨き)必須(すべてのクリニックで行う)省略可能だが、品質重視のクリニックでは行う

関連記事:トルコ植毛の「FUE法」「OHT法」「DHI法」の違いや施術の流れ・痛みについて解説

株分け(株磨き)は、手術中に痛みを感じる?

株分け(株磨き)は患者様の体の外で行う作業のため、手術中にこの工程が原因で痛みを感じることはありません。

採取された株は別の作業台で専任のスタッフが株分け(株磨き)作業を行うため、その間、患者様は休憩や軽食を取るなど、リラックスして過ごせます。

東京植毛クリニックでは「無痛植毛」を掲げており、局所麻酔に加えて静脈麻酔も併用することで、手術中の痛みや不安をほとんど感じない状態を目指しています。

また術後の痛みについても、FUE法はFUT法に比べて負担が少ないとされており、処方される鎮痛剤で十分にコントロールできる程度です。

株分け(株磨き)の工程があることで費用は高くなる?

株分け(株磨き)を丁寧に行うクリニックでは、専任スタッフの人件費や3D実体顕微鏡などの設備投資、手術時間の延長により、費用が高めになる傾向があります。

ただし、株分け(株磨き)の有無が料金表にはっきりと書かれるケースは少なく、追加料金が別に取られるわけでもありません。

株分け(株磨き)をしっかり行っているクリニックは比較的高めの価格帯になる場合が多いですが、定着率の高さと仕上がりの自然さを考えれば、長期的には費用対効果が高いといえます。

株分け(株磨き)を行うと手術時間はどのくらい長くなる?

株分け(株磨き)を行う場合、手術時間は追加で30分〜1時間程度延びることが一般的です。

例えば、1,000株の株分け(株磨き)を行う場合、ベテランの看護師で約30分かかるといわれています。

ただし、株分け(株磨き)は他の工程と同時に進められるため、全体の手術時間への影響は限定的です。

医師が株採取を進めている間に、別のスタッフが採取済みの株を顕微鏡下で加工していくため、採取が終わる頃には、すでに多くの株分け(株磨き)が完了しています。

このように並行作業を行うことで、患者様の待ち時間は最小限に抑えられます。

自毛植毛では、株分け(株磨き)など時間をかけるべき工程にしっかり時間をかけることが、満足のいく仕上がりを目指すうえでも重要です。

まとめ|株分け(株磨き)は自毛植毛において必須の作業

この記事では、自毛植毛における株分け(株磨き)の重要性、具体的な作業内容、省略した場合に起こり得るリスクについて解説しました。

【記事のポイント】

  • 株分け(株磨き)は、採取した株を顕微鏡下で分類して形を整える精密作業
  • 定着率の向上と生え際の自然なデザインを実現するために欠かせない
  • 株分け(株磨き)を省略すると、生え際の凸凹、定着率の低下、炎症のリスクが高まる
  • 日本国内では時間とコストの問題から、株分け(株磨き)を省略するクリニックも存在
  • 適切な技術がなければ逆効果になるリスクもある

自毛植毛は、移植する株の量だけでなく、質も完成時の仕上がりに影響します。

株分け(株磨き)は、この質を確保するための最重要工程です。

自然な仕上がりと高い定着率を求めるなら、株分け(株磨き)をしっかり行っているクリニックを選びましょう。

東京植毛クリニックでは、トルコの大手クリニック「エステワールド」との技術提携により、世界水準の株分け(株磨き)技術を提供しています。

3D実体顕微鏡による1株ずつの丁寧な観察、専任スタッフによる精密なトリミング、特許技術を使った株保管など、すべての工程で妥協のない品質管理を行っています。

株分け(株磨き)について詳しく知りたい方、自身の薄毛に自毛植毛が合っているか相談したい方は、ぜひ東京植毛クリニックの無料カウンセリングをご利用ください。